2019年 08月 08日
8月8日(木):一度置き換えられたものは簡単に戻らない |
先週の日経には「ヤマト、値上げ裏目に 人手確保も取扱数戻らず」と題した記事がありました。
内容としてはヤマトホールディングスの2019年4月~6月の連結決算で営業損益が61億円の赤字発表を受けてのものです。
2019年1月~3月期も営業赤字だったので、これで2四半期連続の赤字ということになります。
こうなった背景としてはヤマト運輸がドライバーなどの人手不足や長時間労働の是正などのために荷受けを抑制し、かつ待遇を改善するために人件費を引き上げ、その分を価格に転嫁する形で取引先への値上げ要請を取りました。
その値上げ幅も相当に強気な要請だったこともあって、あまりの値上げ幅に配送先を切り替えたり、自社での物流網構築に動いた企業も少なくありません。
ヤマト運輸としては荷受けを抑制していた分などは人手が整ってサービスを拡充すればすぐにでも取扱数が戻ってくると踏んでいたのかもしれませんね。
でも、結果としてはそれぞれの企業がヤマト運輸への依存度を引き下げる方向に動き、この2年ほどでそれが定着した感があるのでしょう。
だからヤマト運輸がサービスを開放して全面的に再開したからといって、急いでそれに切り替える理由がないのだと思います。
それゆえ人件費は引き上げて高コスト体質になったところへ荷物の取り扱いが増えないから赤字という構造です。
これは半ば当たり前であって、今から2年ほど前の状況を見れば、このような状況に至る流れは既に見えていました。
今から2年以上前にはこのブログでもアマゾンが自社配送網を強化していく旨や、それを進める意図、背景にある利便性追求への必然性にも触れたと思います。
■アマゾンのアイディンティティ(2017年6月27日)
また先のような値上げ幅や要請の仕方をしたら、仮にヤマト運輸への依存度を高めるのは危険だと感じた取引先もあったはずです。
なぜなら、またヤマト運輸が何らかの状況に陥れば、更なる値上げ要請が来ることは容易に想像がつくためです。
ヤマト運輸としては人件費上昇が進むなか、単純な値下げ攻勢ではもはや利益は出せないでしょうし、それは「もときた道」でもありますから悩ましいところでしょう。
そしてこれに関連したもうひとつの懸念は、このまま需要が伸びなければ収益改善のために配送の無人化が強く推進されていくだろうことです。
それによってドライバーの方々の雇用は失われていくだろうし、ここでもまた「一度置き換えられたものは戻ってこない」との現実に直面するはずです。
もとを辿ればドライバーたちが会社へ待遇改善を求めたことに端を発していますが、それをヤマト運輸は荷受け抑制、値上げとして他社に負担を求めたことで需要を失い、また赤字体質となれば今度は人手を減らすことで利益確保に走り、最終的には待遇改善を求めたドライバーの雇用が無くなる、という結末はなんとも因果な話です。
以前にヤマト創業家のご家族の方のインタビュー記事には、いまの会社で小倉昌男の経営学が語られることもあるけれど、その意味合いを本当に理解できているとは言い難い、といった旨を語られていたのを思い出しました。
それは先のような値上げの進め方などは、故小倉昌男だったら絶対に「うん」とは言わないだろう、とのことでしたね。
その意味ではヤマト運輸も現在の局面は再びどうやって需要を喚起するか、ということもありますが、同時にDNAも問われているのかもしれません。
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by biz-365
| 2019-08-08 18:01
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