2017年 05月 04日
5月4日(木):拡大局面でのジレンマ |
昨日の日経MJにはドワンゴの「ニコニコ動画」、そして一大イベントである「ニコニコ超会議」に関する記事がありました。
内容としては来場者、視聴者数の伸び悩み、サービスとしての曲がり角を迎えつつある状況を報じたものです。
具体的には第6回目となるニコニコ超会議が先月末に行われましたが、イベント会場への来場者数は約15万人で、前年比1.3%増でした。
微増はしているものの2015年までの年率2ケタ成長を続けてきた状況と比べると、その伸びが鈍化をしてきたのはハッキリと見て取れます。
それ以上に深刻なのが超会議の生放送を視聴するネット来場者数で、こちらは前年比約9%減の505万人となり、2年連続での減少です。
このような状況になってきたのは幾つかの要因が絡んでいますが、拡大時に生じるジレンマがひとつですね。
超会議でいえばイベント規模を拡大し、さらにはより多くの来場者数を集めようとしていくなかで大企業の協賛を得ていったり、集客力のある芸能人、著名人を起用するなどしてきました。
これはこれでひとつの有効なアプローチだと思いますが、もともとのニコ動の性質、そこでのユーザー特性からした場合の難しさですね。
ニコ動はユーザー自らがコンテンツを投稿する「UGC(ユーザージェネレイテッドコンテンツ)」の先駆けであり、「CGMカスタマージェネレイテッドメディア」でもありました。
そのようななか、良い意味での自分の世界をもったオタクの人々が、そこに自分たちが楽しめる独自のコンテンツを集めていったわけですね。
それは既存メディアやそこでのコンテンツが王道としてのメインストリームであるなら、それとは別次元の独自の世界です。
そうやって自分達なりの深く、濃い独自世界を作ってきたのに、超会議などが拡大するなかで、前述した大手企業の資本やそれに絡んだ意図、そして著名人のコンテンツなどが流入をしてくることで、従来のユーザーが好きだった「色」が少なからず変わってきた面があるのだと思います。
そうしたセンチメンタルともいえる部分、あるいは変質することで面白さを失ったと感じる不満など、従来のコアユーザーからすれば種々の思いがあるでしょう。
この点は拡大局面で生じる非常にデリケートな問題ですね。
より多くのユーザーを集めようとするなかで幅などを出そうとコンテンツをテコ入れすることで集客につながる面もありますが、既存のコンテンツが特異的であればあるほど変化によって従来の特色が薄れてコアユーザーの離散につながりかねないからです。
これは今回のニコ動に限らず、他の商品やサービス、コミュニティにおいても生じる可能性があることです。
一例を挙げれば観客動員数が伸びているプロ野球の横浜ベイスターズですね。
こちらはマーケティングを徹底し、数多くのイベントなどを仕掛けることなどで観客動員数を伸ばしてきたのは周知の通りです。
これ自体は非常に望ましい結果ですが、一方で従来からいるコアなファンからはまるっきり野球のことを知らない「にわか」ファンが増えていること、それによってチケットが取りにくくなっていることは嫌だ、と感じている方が少なからずいます。
これも構図としては似たような状況だと言えますね。
拡大局面での新規顧客開拓と従来からのコアユーザー、それぞれへの配慮やバランスをどう保つのかは意識すべき大事な事柄だと思います。
昨日にはちょうど家庭用ゲーム機市場が下げ止まり、そこから復調の兆しが見えつつある旨のブログを記しましたが、例えば今ならPS4を販売するソニーでは一貫してコアユーザーを意識してきたように感じます。
かつて任天堂が「wii」のヒットでライトユーザーを開拓した際や、スマホゲームが台頭してきたなかでも、安易にそちらに流れて迎合するような動きは見せませんでした。
そうやってコアユーザー向けのコンテンツを継続的に強化してきたから、不動のコアユーザーがPSシリーズに付いている面は間違いなくあるはずです。
少し長くなってきてしまったのでこのあたりにしておきますが、サービスや事業規模の拡大局面では今回記したようなことは考えるべき大事な点だと思います。
by biz-365
| 2017-05-04 12:30
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